歯周病とは
歯周病の主な原因
歯周病は「歯の周辺の病気」と文字で表されている通り、歯を支えている歯茎や歯槽骨などの歯周辺の組織が破壊されていく病気です。
歯周病は長年、日本人が歯を失う原因第1位です。
歯みがきを怠けたり、汚れをしっかりと除去できていないと、細菌がこびりついて繁殖します。また、歯の噛み合わせが悪い部分は慢性的に刺激を受けるため、骨が溶けてしまう場合があります。
こうなると、歯と歯茎の隙間に細菌が侵入し、そこに病巣をつくります。このように細菌が繁殖し、増殖した細菌が毒素を排出して歯肉が炎症を起こし、歯を支える歯槽骨を溶かしてしまいます。
歯周病チェック
- お口の中がネバネバする
- 以前より口臭がひどくなったように感じる
- 歯みがきをする時に出血がある
- しばらく歯科医院に行っていない
歯周病の進行と歯周組織の状態
歯周病の進行度と症状
歯肉炎
歯周ポケットに歯垢(プラーク)が溜まり、歯肉に炎症が起きている状態です。
炎症は歯肉だけに起きている状態のため、歯垢を除去し、丁寧なブラッシングを行えば治ります。
ただし、思春期性や妊娠性の歯肉炎のようなホルモンが関係する歯肉炎の場合は治りにくく、歯周炎に進行しやすいので注意が必要です。
歯周炎
炎症が歯肉だけでなく、歯を支える歯根膜や歯槽骨といった組織にまで進行している状態です。
進行度合いによって軽度・中等度・重度と分類されます。
軽度歯周炎
歯周ポケットの深さが3~4mm程度。歯の周りが腫れ、歯を支えている歯槽骨まで溶け始めているため、レントゲンでも骨量の低下を確認することができます。
この時点では自覚症状がほとんどないため、歯科医院で検査を受けて初めて知る方が多いです。
この段階までは正しいブラッシング、歯垢や歯石の除去で治ります。
中度歯周炎
歯周ポケットの深さが4~6mm程度。さらに歯肉が腫れ、レントゲンでも歯槽骨の吸収や、歯周ポケットの中に付着した歯石がしっかりと確認できます。
歯石を除去する際には麻酔が必要になり、歯周外科などの他の治療が必要になる場合もあります。
重度歯周炎
この段階までくると歯肉が常に腫れ、出血を伴うようになります。歯肉から膿が出てお口の中がベタベタし、口臭もきつくなります。
歯がグラグラし始めるので噛むことも難しくなります。レントゲンでは歯槽骨が歯根の先まで吸収していることが確認できます。
歯石の除去について
一般的に「歯石取り」や「歯のクリーニング」といわれるのが歯石除去治療ですが、歯石除去の方法は歯周病の進行度合いによって異なります。
歯周ポケットの深さが4mm以上になっている場合、縁上歯石(歯表面の歯石)だけを除去しても歯肉の炎症は治まりません。縁下歯石(歯肉の中で歯根面に付着している歯石)を除去する必要があります。この場合、まずは縁上歯石を除去してから、特殊な器具を用いて縁下歯石を除去します。この歯周治療法をスケーリング・ルートプレーニング(SRP)といいます。
極端に歯の本数が少ない場合を除き、複数箇所に分けて歯石の除去を行うのが一般的です。患者さまにとっては、何度も通うのは面倒なため、少ない回数で治療を終えたいお気持ちもよく分かります。
しかし、歯肉の奥深くまでべったりと付着した縁下歯石はそう簡単には取り除くことができません。この点をご理解いただき、受診いただければと思います。
歯周外科について
通常の歯石取りだけでは歯周病が治らない場合、原因を取り除くための外科的処置が必要です。
歯周外科治療によって、歯周病の治りが早まったり、歯肉の状態改善が期待できます。
歯周ポケット掻爬術
歯肉にひどい炎症が起こると、一部壊死してしまいます。
壊死してしまった歯肉が再生することはなく、壊死した歯肉が残っているとそこに汚れが付着し、健康な歯肉の治癒の妨げになってしまいます。
歯周ポケット掻爬術を行うことで、壊死した歯肉を取り除き、歯肉を健康な状態に近づけることができます。
フラップ手術
歯周ポケットの中に歯石が溜まっていると、治療器具が届かず全ての歯石を除去できない場合があります。
そのような場合には、フラップ手術を行います。フラップ手術とは、一部の歯肉を切開して歯や骨から剥がし、しっかりと見える状態で全ての歯石を除去していきます。
歯石を除去した後は歯肉を縫合して元に戻します。
GTR法
歯肉を支える歯槽骨が減少すると歯がグラグラするようになります。
骨の再生を促す治療法がGTR法です。まずは歯肉を切開して歯から剥がし、歯の根本に付着した汚れを全て取り除きます。
その後、GTR膜という膜で骨を再生させたい部分を覆い、歯肉を縫合します。GTR膜で覆われた部分は、自然治癒力によって骨や結合組織が再生します。
歯周再生治療
骨や結合組織を再生させる治療です。まずは歯肉を切開して歯根部分を露出させ、付着した汚れを全て除去します。
その後、歯根面(露出させた根の部分)を薬で処置し、エムドゲインというゲル状の薬剤を塗布してから歯肉を元通りに縫合します。
塗布した薬剤によって少しずつ歯肉や骨を再生させることができます。
治療後のメンテナンスが重要
歯周病はしっかりと歯みがきが出来ていないことや、生活習慣によって再発を繰り返しやすい病気です。
お口の中はとても複雑な構造になっていて、常に100%きれいな状態をキープするのは難しいとされています。そのため、数ヶ月に1度は歯科医院にてプロによるクリーニングを受けることをおすすめしています。